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2024 初夏~梅雨時期の自然観察

雨の多い時期になってきました。時々、晴れると、気温がうなぎ上りになります。この時期は、早朝、地元の「葦毛湿原(いもうしつげん」に行くことが多いです。理由は、一年でもっとも変化を感じる時期だからです。

ノハナショウブ(野花菖蒲、Iris ensata または Iris ensata var. spontanea)@葦毛湿原。園芸種の花しょうぶの原種になります。野生です。
ハンカイソウ(樊噲草、Ligularia japonica )@葦毛湿原。一見、どこにでもありそうな花に見えますが、とんでもないです。学名にjaponicaとあることからも、最初に日本で発見され、命名されたものと思います。実際は、国内では、静岡以西の中部から九州までの西日本(の限定的な湿原周辺)にしか自生していません。
バイケイソウ(梅蕙草、 Veratrum oxysepalum var. oxysepalum)@葦毛湿原。湿地に自生していますが、自生地は限定的で、愛知県では、他の場所にもあるかもしれませんが、葦毛湿原でしか見たことがないです。
ルリシジミ(瑠璃小灰蝶、Celastrina argiolus)@葦毛湿原。めったに羽をひろげてくれません。湿原中央広場付近で、舞っていたので、じっと目で追いかけていたら、地面の石の上に止まり、羽を開いたので、絶好のシャッターチャンスに恵まれました。
ミドリシジミ(オス)(緑小灰蝶、Neozephyrus japonicus)@葦毛湿原。葦毛湿原手前の都市公園に、以前、古株のハンノキ(ミドリシジミの食樹)が多数繁茂している場所がありました。そこで毎年、安定的に観察できていたのですが、おそらく市の方針で昨年からハンノキを含む公園内のこんもりとしていた森の木々が大規模に伐採され、切り株だけ残る閑散としてつまらない公園になってしまいました。切り株だらけになっているので、子供たちが遊ぶこともできません。この公園にいたミドリシジミを代表とする希少な昆虫たちは、ほぼ絶滅したようです。市が管理する限り、仕方ないのかもしれません。今では、豊橋で安定的にみられるのは、葦毛湿原だけになったしまったような気がします。とはいえ、葦毛湿原も湿原上部の森の樹木が、昨年、大幅に伐採されました。こちらは湿原保護が理由と思われますが、こちらも切り株だらけな部分が葦毛湿原内にあり、ちょっと残念な気分になります。なんとか、うまく、ある程度の樹木を残しながら、湿原管理できないものでしょうか?たとえば、愛知県内なら岡崎市の北山湿地、長野県なら多数ありますが、特に八島ヶ原湿原、入笠湿原、戸隠の湿地などには、目を覆いたくなる切り株だらけの場所などどこにもなく、人が歩きやすい木道のある綺麗な湿原が整備されています。見習ってほしいなあ、と感じます。いつの日か、「全国湿原リスト」で検索して、葦毛湿原が登場する日を期待します。
ヒメヒカゲ(姫日陰、Coenonympha oedippus)@葦毛湿原。絶滅危惧種IB類。日本全国の湿地からいち早く姿を消してきました。幸い、葦毛湿原では採集禁止で保護活動しているので、毎年、観察できます。貴重ですね。湿原の木道周辺にも、年一回、この時期になると、ひらひらと舞っているので、写真撮影しやすいです。

2024春~初夏の風景

また春がきて、光がキラキラする季節になりました。今年は遅れていた桜も4月上旬に満開を迎え、5月中旬の現在は、葉桜に変わっています。
夏鳥のツバメやオオルリ、キビタキがさえずり、野山も海辺も、初夏の香りに満ち溢れています。東三河を中心に、春から初夏の風景を撮影してきました。

植物編

ハルリンドウ(春竜胆 Gentiana thunbergii)@葦毛湿原
キリシマツツジ (霧島躑躅、Rhododendron obtusum)@のんほいパーク
トキソウ(朱鷺草、鴇草、Pogonia japonica )@葦毛湿原、愛知県では絶滅危惧IB類
ホソバシャクナゲ(細葉石楠花、Rhododendron makinoi )@愛知県民の森、愛知県天然記念物
キリ(桐、Paulownia tomentosa)@吉祥山、かつて、日本中あちこちで桐を見かけましたが、最近はめったに見られない気がします。桐の紋章は歴史的に豊臣家の家紋としても有名で、花札にもありますが、我々には、パスポートの写真欄の右上にある桐のマークで有名ですね。
シャクヤク(芍薬、 Paeonia lactiflora)@のんほいパーク
シャクヤク(芍薬、 Paeonia lactiflora)@のんほいパーク
ナツハゼ(夏櫨、 Vaccinium oldhamii)@葦毛湿原、赤いスズラン形状の花がかわいいです

野鳥・鳥類編

キビタキ(黄鶲、Ficedula narcissina)@横浜市、市民の森。夏鳥で山野で繁殖する代表例
キジ(雉子、雉, Phasianus versicolor)@豊橋市 豊川河川敷
カモメ(鴎、Larus canus)@三河湾沿岸。ウミネコ(夏が主)、セグロカモメ(冬が主)、ユリカモメ(真冬が主)と違って、カモメは、当地方では、主として春先だけ観察できます。
コマドリ(駒鳥Luscinia akahige)@のんほいパーク
ツバメ(燕、玄鳥、乙鳥、Hirundo rustica)@豊橋市内。夏鳥といえば。
ヒバリ(雲雀、鸙、告天子、Alauda arvensis)@東三河、大学の住所が「雲雀ケ丘(ひばりがおか)」なので、昔はもっといたのでしょうね。東三河で出会う機会は少ないですが、それでも春先の繁殖期にもっとも出会える気がします。
キビタキ(黄鶲、Ficedula narcissina)@森林公園。夏鳥。葉が生い茂った暗い森に多いので、見つけるのは大変です。春先は、オスがさえずっているので、声と「黄色」を頼りに必死で探します。見つけると、とてもテンションの上がる小鳥の一種ですね。
キビタキ(黄鶲、Ficedula narcissina)@横浜市、市民の森。夏鳥
ホトトギス(メス)(鵑、Cuculus poliocephalus)@葦毛湿原。夏鳥
キジ(雉子、雉, Phasianus versicolor)@豊橋市内
イソヒヨドリ(オス)(磯鵯, Monticola solitarius)@三河湾沿岸
イソヒヨドリ(メス)(磯鵯, Monticola solitarius)@三河湾沿岸
エナガ(柄長、Aegithalos caudatus)@横浜市、市民の森
オオルリ(大瑠璃、Cyanoptila cyanomelana)@愛知県民の森。夏鳥
オオルリ(大瑠璃、Cyanoptila cyanomelana)@愛知県民の森。夏鳥
コアジサシ(小鯵刺、Sterna albifrons)@東三河。夏鳥。「求愛給餌」の瞬間です。ツバメは雨のこない軒先などに巣を作りますが、コアジサシは主に餌となる小魚が採取できる河川・海岸などの砂浜や砂利場に卵を産むので、子孫づくりは、ツバメより圧倒的に大変だと思います。カラスや人や風雨(環境変化)など、様々なものと戦ってるので、本当に、頭が下がります。少なくとも砂浜の環境保全の協力をしていきたいと思います。
コアジサシ(小鯵刺、Sterna albifrons)@東三河。夏鳥
ケリ(鳧、計里、水札、Vanellus cinereus)@東三河。ケリが田んぼにいる姿は地味ですが、飛翔時には白い翼が見えるので、いつか写真に撮りたいなあ、と思っていました。
カモメ(鴎、Larus canus)@三河湾沿岸。足が黄色で、嘴の先がウミネコのように黒くなっていません。同じカモメ属のウミネコ(主として夏)、セグロカモメ(主として冬)、ユリカモメ(真冬~春先)は季節は違いますが、よく出会うことができます。しかし、本種は意外と出会う機会が少なく、東三河では春先のみ見かけます。
セグロカモメ(背黒鴎, Larus argentatus)@三河湾沿岸。足がピンクです。
ユリカモメ(百合鴎、Chroicocephalus ridibundus)@三河湾沿岸。足が赤色です。夏は頭が真黒になります、目下、少し、黒くなりかけています。
アカエリカイツブリ(赤襟鳰、Podiceps grisegena)@三河湾沿岸。カモメ同様、春先だけ見られます
ホシハジロ(メス)(星羽白、Aythya ferina)@三河湾沿岸。春先まで残っていた冬鳥です。
スズガモ鈴鴨、Aythya marila L.)@三河湾沿岸。こちらも春先まで残っていた冬鳥です。左がメス、右がオス。
キンクロハジロ(金黒羽白、Aythya fuligula)@三河湾沿岸。こちらも春先まで残っていた冬鳥です。左がメス、右がオス。スズガモに似ていますが、よ~く見ると、かなり違います。

昆虫編

ニホンカワトンボ(Mnais costalis)@横浜市、市民の森
アサヒナカワトンボ(Mnais pruinosa )@葦毛湿原
ムカシヤンマ(昔蜻蜒、Tanypteryx pryeri)@葦毛湿原。葦毛湿原以外では、見たことがありません。初夏によく見られます。
ハッチョウトンボ(オス)(八丁蜻蛉、Nannophya pygmaea)@田原市。日本最小のトンボ。大きさは1円玉くらい。保護された一部の湿原だけで観測されます。豊橋で最も有名な葦毛湿原では見たことがありません。日本中、湿原の縮小とともに、どんどん減少しているとのうわさがあります。
ハッチョウトンボ(メス)(八丁蜻蛉、Nannophya pygmaea)@田原市