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ブリュッセルでのISO会議

ISO(正確にはISO/IEC JTC1 SC24)の国際標準委員をはじめて早いもので17年目になる。国内の委員長になってから6年目であと2年で国内委員長の任期は終了予定である。前置きはさておき、毎年8月にヨーロッパ、アジアパシフィック、USAの順番にローテーションで国際総会が開催される。今年はヨーロッパの順番で当初の予定ではロンドンであった。しかしロンドンはオリンピックやパラリンピックのため混雑が予想され、ロンドンから鉄道で2時間(パリからも鉄道で90分くらい)に位置するベルギーの首都ブリュッセルで行われることになった。日本からブリュッセルへの直行便はないため、中部国際空港からフィンランドのヘルシンキを経由してブリュッセルへと向かった。

今年の話題は、Googleメガネで有名になった拡張現実(Augmented Reality:AR)に関するはじめての国際ワーキンググループの会議が開始されたことである。ARは画像や映像を扱うどのIT関連企業も、あるいは他の標準団体も、主導権争いが激しく、とても「熱い」議論が繰り広げられた。

国際標準委員会は毎年一週間ぶっ続けで、朝から晩まで行われる。最後の金曜日の最終決議で、各国代表団からの意見が述べるチャンスがくる。異論がなければ「しゃんしゃん」と閉幕される。今年は少し事情が違った。ARに関する新しい標準規格を、韓国の代表から前代未聞の緊急提案と会議中の緊急投票の催促が会議の初日にあがったが、最終日の決議の際に、日本から自分が代表して反駁の意見を述べることになった。韓国の意見に当初賛成していた中国、UK、USA、オーストラリアがどういう反応をするか恐れていたが、なんと、彼らが折れてくれて、日本が述べた発議が採択され、緊急提案は取り下げられ、通常提案と通常投票に変更になった。たまには、反対意見を「どんと」述べることも効果があるなあ、などと感じた次第である。

写真は、左上が、最終日の決議のあと解散前に写真撮影したもので、右上が会議の開かれたヨーロッパの標準団体Cen/Cenelecの入るビル、下左がブリュッセルの人気のスポットのグランプラス、その右が、グランプラス近くの広場の様子である。