学会で発表したり、他人の発表を聴いたり、を繰り返すうちに、この年になって「今更ですか?」という感じもしますが、いろいろ思うようになってきました。
遡ること30年前の1980年代半ばに大学生から社会人になった頃、入社した会社IBMの社訓は「Think!」(考えよ)の一言。とても明快で、今も、自分の好きな言葉のひとつです。一方で、70年代にブームになっていたブルース・リーの言葉「Don’t think. Feel!」(考えるな、感じよ)という言葉も、その後、いろいろなところで出くわして、一見、IBMの社訓と矛盾するようですが、これも結構、的を得ていて、好きな言葉の一つです。
今回、筑波大学で行われたFIT2014に聴講者として参加してきて、研究室の学生君の発表や、他の大学、社会人の方の発表等を聴講しているうちに、久しぶりになぜか、「考える」ということに真剣に向き合う必要があるなと感じはじめました。悩んだ挙句、昔、どこかで「考える」事を真剣に論じた著書があったなあ、ということで、うろ覚えの記憶をたどりながら思い出したのが、小林秀雄の著書(「考えるヒント」)の中の「考えるという事」の一節です。『考えるとは、物に対する単に知的な働きではなく、物と親身に交わる事だ。物を外から知るのではなく、物を身に感じて生きる、そういう経験をいう。』 この言葉に再度出会って少し納得。論理的解釈は難しいですが、工学的なひとつの解釈としては、ある仮説や理論に基づいて研究しはじめたなら、その仮説や理論の「意味を感じる」ことが大事だと…。って、なんか偉そうなこと言ってますが、自分の中では、ある仮説の実証実験で、いろいろパラメータを変えて、いったい何が起こるか、できるだけ感じながら理解していこうと解釈しています。
写真は筑波大学のとある教室での研究室の学生君の発表ですが、聴衆に注目して撮影してみました。「聴衆は、発表から何を感じ、何を考えているのだろうか?」たまには、こういう視点で学会の中で思いに耽るのもいいかなと。